契約恋愛~思い出に溺れて~
「……どうしてだろ」
「何?」
身を乗り出してくる英治さんと、いたわるような眼差しを向ける達雄さん。
「愛してるのに寂しいなんて」
そう言葉にした途端、瞳に涙が湧きあがってきた。
おかしい。
泣くつもりで言った訳じゃなかったのに。
「愛してる人が居るのに、寂しいなんて」
あの人の、肌の感触をもう思い出せない。
柔らかく触れる唇。
そう言葉では言えるけど、その感触はとうに消えて、おぼろげな形を残すだけ。
心は満たされる。
娘の愛らしさと、思い出があれば。
だけど、感触は戻らない。
時がたてば薄らいで、思いだそうとすればするほど失っている事に気づく。
それがとても寂しい、……悲しい。
「私」
涙を止めることが出来なくなった私を、英治さんも達雄も酔いがさめたかのような顔で見ていた。