契約恋愛~思い出に溺れて~

私たちは、連絡先を交換して別れた。

遠ざかるお母さんの背中が小さくなった頃、英治くんがそっと口を開く。


「……逃げてばっかりきたから」

「え?」

「成長してなくて、かっこ悪いねぇ……」


小さな呟き。

泣きそうな瞳。


そんなことないよ、って言いたかった。

だけど上手く言葉にならないから。

紗優が見てるのももう気にせず、私は彼の背中を抱きしめた。


「ママ、サユも!!」


紗優はどこまでわかっているのか。

反対におなかの方から英治くんに抱きつく。

私たちに挟まれた英治くんは、その背中を少しだけ曲げて、前に居る紗優を抱きしめる。

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