契約恋愛~思い出に溺れて~
「……成長しないとね」
「ううん。英治くん、頑張ったよ」
「でも抱きしめてやれなかった」
「そんなの、また今度でもいいじゃない」
「……うん」
喧騒の中、どこか頼りなげに見える彼に、何度も何度も励ましの言葉をかけた。
やがて紗優がポツリと、「おなかすいた」と呟く。
その言葉に、英治くんはようやく笑って、
「よし。何か食べに行こう」
と、顔をあげた。
そして、ふっきれたようなその表情で、新しい一歩を踏み出した。