契約恋愛~思い出に溺れて~
後ろの隅の方で、所在なげにしているのは、彼のお母さん。
招待状を出した時、出席に丸をつけてくれたものの、
『本当にいってもいいですか?』と言葉が添えてあった。
私はそっと近づいて、お母さんに礼をする。
「来てくださってありがとうございます」
「紗彩さん」
「私、嬉しいです」
ユウのお母さんに出来なかったことを、彼のお母さんには出来るようになっている。
私も年を重ねたという事なんだろう。
自分の気持ちを伝えることが前よりも上手になった。
涙目のお母さんは、まだ少し戸惑った様子だったけれど、英治くんとも話をしていた。
いつかは屈託なく話せるようになればいい。
そう思いながら、二人の姿を少し離れたところから見る。
そうして、皆に挨拶を済ませて、
二次会の会場であるブルースバー『Hellebores』へと向かった。