契約恋愛~思い出に溺れて~


 少し奥まったところにあるそのバーは、英治くんと初めて会った場所でもある。

達雄も一緒にいて、私は最初、達雄との契約恋愛を選んだ。

あの時は、まさかこの人と結婚するなんて思ってもみなかったんだから、人の縁って不思議なものだ。


「いらっしゃいませ」


オーナーの倉崎さんが出迎えてくれる。
冬でも半袖の彼は、見ているだけで寒々しい。


「本日はおめでとうございます。皆さんお待ちかねですよ」


店内は既に彼と私の仕事関係や、学生時代の友人で一杯になっていた。

結婚の報告をした後は、私の好きなピアニスト、香織さんが演奏を披露してくれる。


初めて出会った日に、初めて聞いた彼女の演奏。

今は懐かしい思い出として温かい気持ちを運んでくれる。

食事をしながらの談笑。
私と彼はそれぞれに友人たちと話をした。

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