契約恋愛~思い出に溺れて~
「はあ」
息を吐きだすと、白い。
途端に体に寒さを感じた。
そうだ、今は冬だ。
辺りはシンと静まりかえって、紗優の寝息と時計の秒針の音が部屋中に響く。
私は頭から布団をかぶって、夢の前半部分に戻ろうとした。
必死に目を閉じて、夢の中での記憶を辿る。
『サヤ』
そう言って、笑った。
頭上から日光を浴びて、長い髪が顔に影をつくっていた。
もっと見せて。
その顔、あなたの動き。
忘れずにいられるように。
だけど、そう願えば願うほど、
その輪郭はぼやけてかすんでいく。