契約恋愛~思い出に溺れて~
「……はぁっ」
目を開けた時、額に汗がにじんでいた。
肩で息をしている。
まるで、100メートルを全力疾走した時のようだ。
部屋の中は暗く、私の隣の布団では、4歳の娘が寝息を立てている。
「紗優」
「んー」
寝がえりと共に、返事ともつかないうめき声をあげる。
「夢……か。そうだよね」
はあ、と大きく息をついて、目尻に溜まった涙を重力に任せて落とす。
「ユウ」
そのまま、寝室の隅に陣取る仏壇に目をやる。
夢の中と変わらない歳のユウが、そこにいる。