契約恋愛~思い出に溺れて~

「ほら、ママ。バスがきた」


席に座って、流れて行く景色を眺めながら止まる度にバス停の数を数える紗優。


ユウは紗優が大好きだった。

頭の上まで持ち上げて、紗優のお腹のあたりに息を吹きかけて紗優が笑いだすと離す。
そんなことをよく、繰り返してしていた。


「ママ、ここでおりるんだよね」


紗優が私の手を引っ張る。
私は慌ててバス代を出し、運転手の脇にある支払い機に入れた。


「ほらママ、こっち」


紗優は大きくなった。

私はもう、長い時間はこの子を抱っこ出来ない。
それどころかこんな風に、手を引いてもらうことの方が多い。

ユウが死んだ時はまだ2歳。
走ろうとしては転んで泣いて、ユウに肩車される。
そんな頃だったのに。

あれからもう4年も経ってしまった。


紗優は、覚えてる?

ユウのこと、どのくらい覚えてる?

あなたのことが大切で、大好きで、とても愛していたのよ。
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