僕は生徒に恋をした
「悪いな、手嶋先生なら先に学校に戻ったよ」

我ながら、何で謝っているんだろうと思う。

「もう遅いし、早く帰った方がいい」

山田は少しためらい、口を開く。

「…もう少しだけ休んでいく。
先生は帰っていいよ」

「こんなところに置いて行けるか。
もう暗いし、人通りもないから危ないだろ」

どうも山田の様子がおかしい。
不審に思ってよく見れば、山田の下駄の鼻緒が切れている。
それで、帰りたくても帰れないのか。

「何で言わない」

俺が顎で鼻緒を指すと、山田は苦笑いをしてごめんと謝った。

「見せて」

俺は山田の下駄を拾う。
結び目が解けただけならともかく、鼻緒自体が切れてしまっては直すのは難しい。
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