僕は生徒に恋をした
「ないない、絶対ないよ」

見なくても、山田が首を必死に横に振っているのが分かった。
きっと昨日のように目を真ん丸にしているに違いない。

「昨日、佐々本先生にも言われた。
その噂、どこまで広まってるんだろ」

「マジか。やった」

武内が喜ぶのを聞いて、俺は何となく嫌な予感がした。

「付き合ってる奴いないならさ、俺と付き合わない?」

武内の告白はシンプルだった。

俺はただ扉の外で立ち尽くす。

俺は山田が生徒でなくなる来年まで、どうすることもできない。
山田がどういう返事をしたとしても。

山田は沈黙していた。

「まぁ、考えといてよ」

武内はそう言って扉を開けた所で俺と目が合い、息を飲んだ。
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