僕は生徒に恋をした
「お気に入り?」

俺が聞き返すと、林原はちょっと耳を貸せ、と俺に近づいた。

「噂になってんだよ。
知らないのか?」

「噂…?」

「手嶋先生と山田、デキてるんじゃないかって」

「はぁ?!」

俺は思わず声を上げてしまった。

「バカ、でかい声出すなよ。
本当にお前聞いたことないの?
夜遅くまで、美術室に二人きりで何やってんだって」

全くの初耳だった。

俺の頭の中で、手嶋先生と山田が結び付かない。

「ていうか生徒だぞ」

俺はどうにも信じられない。

「生徒と、なんて珍しい話じゃないだろ。
まぁ、俺は勘弁だけどな」

林原はそう言って俺を残して職員室を出て行った。

休憩時間は残り少なく、俺も慌てて机の上の教科書類をかき集めて職員室を出る。

図らずも、次は2-Bの数学だった。

頭の中を、林原の話がぐるぐる回る。

なぜだろう、俺は授業中どうしても山田の顔を見ることができなかった。
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