僕は生徒に恋をした
「先生…、苦しい」

彼女の声に、俺は彼女を抱きしめる力が強すぎたことに気付いた。

力を抜いたら、この腕の中からいなくなってしまいそうだったから。

俺はゆっくりと力を抜き、彼女から離れる。

山田の目が俺を凝視していた。
彼女は俺の言葉を待っている。

俺が今したことの理由を。

彼女を抱きしめておいて、この気持ちをごまかし通せるとは到底思えない。

このままいっそ、思いを伝えてしまいたい気持ちが半分。

それを制止する理性が半分。

彼女がどちらの答えを期待しているのかもよく分かっている。

それと同時に、どちらの答えが彼女のためにならないかも…。

「喉渇いただろ、飲み物買ってくるよ」

俺はずるい。

決断するのが怖かった。

彼女の期待を裏切ってしまうのも、彼女にわざわざ大変な恋をさせるのも。
どちらも怖くて堪らなかった。
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