僕は生徒に恋をした
そんなこと、じゃない。

山田が何も言わずに洋平の家に行ったとしたら、それは俺にとって重大なことだった。

「何で、お前ん家にいるんだよ」

洋平は電話越しに大きなため息をつく。

「―――それに答える義務はないよ」

今度は否定しなかった。

「ふざけんなっ」

俺は電話を切ると同時に走り出していた。

洋平の家まで、この店からなら30分もあれば行ける。

関口が呼び止める声も耳に入らないほど、俺の頭は混乱していた。

いくら洋平が俺に腹を立て、山田に手を出そうとしたとしても、無理矢理家に連れ込むとは思えない。

山田が洋平の家にいるとしたら、彼女が自発的に行ったとしか考えられなかった。
< 261 / 374 >

この作品をシェア

pagetop