僕は生徒に恋をした
もしかしたら、山田は洋平に何かを吹き込まれたのかもしれない。

もしかしたら、どうしてもレッスンが今日じゃないといけない理由があったのかもしれない。

だけど、一番ショックなのは山田が俺に内緒にしていたことだった。

胃が痛い。

山田を疑ってしまう自分と、そうせざるをえないこの状況に吐き気がした。

******

洋平の家の最寄り駅までたどり着くのに、気が遠くなるほど時間がかかった気がする。

ようやく駅に着き、改札へ繋がる階段を探しているとき、向かいのホームに山田の姿を見た。

すぐに反対方面の電車が来て、その姿は見えなくなってしまう。

一瞬のことだった。

だけど俺が彼女の姿を認識するのに、一瞬もあれば十分だった。
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