僕は生徒に恋をした
俺は手嶋先生の後ろを少し遅れて歩く。

手嶋先生は頼りがいがある、いい教師だ。
俺には一つも勝てるところがないかも知れない。

そう自分に言い聞かせる。

仕方ないことなのに、どうして諦めがつかないのだろう。
女々しい自分に嫌気がさす。

「泣きそうな顔だな」

手嶋先生が困った様子で俺を見ていた。

俺は何も言えない、本当に泣きそうだった。

「―――勘違いしているようだから言っておくけど」

手嶋先生は一度言葉を切り、ひと呼吸置いて続ける。

「噂は嘘だよ」

俺は驚いて顔を上げた。
< 32 / 374 >

この作品をシェア

pagetop