僕は生徒に恋をした
「山田とは何もない」

手嶋先生の言う意味が分からず、俺は戸惑う。

「あのとき保健室に行ったのは、山田の連れに美術室の備品で怪我したと知らされたからで」

―――え? 

「俺から佐々本先生に謝ったのは、監督不行き届きを詫びただけだったんだが」

俺は思わず赤面する。
手嶋先生は俺の心が読めるのだろうか、と本気で思う。

「他に聞きたいことはあるか」

頭が働かない。
言葉が頭の中に入っていかない。

「何で俺にそんなこと言うんですか」

何とか出た言葉がこれだ。
俺の顔は今、真っ赤だろうか。

「佐々本先生は分かりやす過ぎる。
新人の頃から全く変わってない」

手嶋先生はそう言って溜息をついた。

俺の山田への気持ちに、手嶋先生は気付いていたと言うのか。
それも、俺よりも前に。

恥ずかし過ぎる。
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