2 in 1

失踪

宇美が速水の失踪を知ったのはそれからまもなくのことだった。急に辞表を出していなくなったらしかった。行き先は誰も知らなかった。
宇美は速水をズルイと思った。自分には逃げるなって言ったくせに、先に旅立つなんて…。宇美は速水ヨコイチという人間がわからなくなった。もしかしたら速水が見舞いに来た日、彼は宇美に別れを告げに来たのかもしれない。
宇美は速水との日々を思い返していた。まだ昨日の出来事みたいだった。どこかから速水の声が聞こえてくる気がした。
先生にもう一度会いたい。でも会えない。会ってはいけない。もう忘れようとする“あたし”とまだ忘れられない“僕”がいた。
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