追憶〜逢いたい人へ〜

やっぱり歩いても、すぐに着いてしまうくらい近かった…。

5分だし………。



家の前に着くと、孝雄は急に真面目な顔になった。


私は“どうしたの?”という言葉の代わりに、孝雄の顔を覗き込んだ。


私と目があうと、意を決したかのように話始めた。


『…噂のこと、ごめん。
反論すれば余計にうるさくなるだろうから、敢えて何も言わなかった…。
俺、ああいうの気にしないし…。
…でも、お前は…』


言葉を遮って、


『わかってる…。』


私が言った後、暫し沈黙が続いた。




『嫌でもなかったしな…』

孝雄がボソッと呟いた。




えっ……?



それってどういう意味…?


初めて、孝雄を意識した瞬間だった…。



けど…この時の私の心の中は勇でいっぱいだったから、意識したことを無意識に流してしまった…。



でも、嬉しかったんだ…。


もしかしたら、前々から意識していたのかもしれない……。


でも、気が付かなかった。

それが恋だったってことに…………。
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