追憶〜逢いたい人へ〜
私に気が付いた孝雄は

『もしかして、帰る方向同じか?』

俯いた私の顔を覗き込むように聞いてきた。

『私はこの先の角を曲がるけど…』
覗き込む孝雄をチラッと見て、その先の角を指差した。

『あぁ…同じだな…』

そう呟いた孝雄は自転車から降りた。

私も自転車から降りる。


そして、自転車を引きながら、孝雄は私の歩調に合わせて歩き始めた。


他愛もないこんな会話から孝雄と私は単なる同級生から、なんでも話せる、わかりあえる、なくてはならない存在になっていった。



そして、別に一緒に帰ろうと約束したわけでもないのに、三年間ずっと一緒に帰ることになるのだった。
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