キスはおとなの現実の【完】
「今回は……」

とてもしずかな口調だった。

「もう一度いただいた資料と照らしあわせたうえで検討いたします」

まえのめりになるわたしの横で、大上先輩がわずかに肩を落としたのが視界の端にうつった。

失敗。

氷のようなひとつの単語が、興奮していたわたしの頭と胸にずしんと落ちてきて、一気に熱を冷ましていく。

担当男性はわたしがわたした資料やカタログをとじてひとまとめにすると、頭をさげた。
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