キスはおとなの現実の【完】
「袴田さん。おつかれさま」

わたしは顔をあげて、顔見知りの酒屋を見る。
一文字に結んだままの口はひらかず、頭だけを軽くさげる。
そのままとおりすぎようとした。

カズトさんはいつものように、やわらかな笑顔をこちらにむけた。

「なんか、すごい顔してますよ。明日、会社お休みですよね。すこしよっていきません」
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