キスはおとなの現実の【完】
妊娠が決定打となり、母は当時つきあっていたパート先の上司と結婚した。
わたしと母と中学生の弟の三人家族に、新たなひとりと新たな生命がくわわることになった。

再婚後の母の家庭は、絵に描いたようにしあわせだった。

新しい父は、わたしにも中学生の弟にもやさしかった。

適度な干渉と適度な放任。
親と子や、人間どうしの距離感をとることがひじょうにうまい人物だった。

これで新しい父親がろくでなしの最低人間だったのなら、あるいは救いがあったのかもしれない。

よくきく悲劇の物語のように、酒びたりの父親からの性的虐待をうけるような状況ならば、わたしの人生はぐれるか破滅するかでとっくにバッドエンドをむかえられた。
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