キスはおとなの現実の【完】
「もしもし、シオリ? 毎日ちゃんとごはんたべてる? ぜんぜん連絡もくれないから、あなたがちゃんと元気にやってるのか、おかあさんなにもわからない」

とくに用事はないらしい。
たまにかかってくる声をきくためだけの電話。

背景には、なにかをぐつぐつ煮る音と、この冬で二歳になる赤ちゃんの笑ったみたいな明るい声。
きっと子守をしながら、あたたかい食事をつくっているさいちゅうなのだろう。

母はいった。
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