キスはおとなの現実の【完】
「なにかたりないものはない? お米かなにか送ろうか? 生活費はちゃんとたりてる? 家族なんだから遠慮しないで、なにかあったらちゃんというんだよ。あんたは昔からがんばりすぎるところがあるから」

母の言葉は電話のむこうの湯気よりも、ずっとあたたかいものだった。

わたしはケータイ電話を耳にあてたまま首を左右にふった。

「ううん。いい。平気だよ。ありがとう」

仕送りのもうしでをことわると、母はさみしそうに返事をした。
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