キスはおとなの現実の【完】
「はい。もしもし」

寝ぼけながら枕もとに手をのばし、ケータイ電話を耳にあてる。

「あっ、シオリ? 元気ー? ひさしぶりい」

酔っぱらいのきんきん声が針のように鼓膜に刺さった。

高校時代の同級生、山崎咲良(ヤマザキサクラ)の声だった。

こういう声は正直いって寝起きにつらい。

マイクとマイクを近づけたときのように、サクラの声が頭のなかでハウリングを起こしている。

わたしは思わずケータイ電話を耳から離した。
ついでにディスプレイを確認する。

深夜二時。

非常識にもほどがある。
< 33 / 224 >

この作品をシェア

pagetop