キスはおとなの現実の【完】
男の人は眉毛のない、わたしの顔をじっと見つめ作業の手をとめ考えこむ。

「たしか……」

名前を思いだそうとしているらしいが、こたえをだすのはむりだろう。
なにせちゃんと自己紹介をしていない。

わたしはいった。

「シオリです。ハカマダシオリ。たしか、カズトさん」

ああ、そうだといって業者の人はぽんと手を打つ。
わたしにならって自己紹介をしてくれた。

「ミモトカズト。『さん』はいいです。なんだかくすぐったくなっちゃう」

そういって業者の人は照れくさそうに笑った。
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