藍色の城
『無理言ってすみません。』
『いえ。今回は特別ということで。』
パッと明るい笑顔になって、
心臓がトクンと高鳴った。
シャンプー後、
どれくらい切るか聞くと、
素早くハサミを滑らせる。
お客様に対して、いつも通りの
対応と接客。
ただ違うのは、今お店には
二人きりだということ。
『このお店は長いんですか?』
突然彼はそう聞いてきた。
『あ…いや、まだ2ヶ月目ですね。』
『やっぱり。見ない顔だなって。』
『え?』
『今の仕事でよく前を通ることが
あるので。』