バニラ
「――キツ…」

恭吾の顔に、もう余裕はない。

「――あっ、ダメ!」

「――理彩…!」

恭吾があたしの名前を呼んで、あたしを抱きしめてきた。

「愛してる…」

その瞬間、あたしの頭の中が真っ白になった。


「いやあ、いい誕生日だった」

「…どこがよ」

なんか遊ばれた感があるんですけどと、あたしは心の中で毒づいた。

「俺の誕生日なんだから、どうしたっていいんでしょ?」

何でもするなんて言うんじゃなかった。

でもニタリと笑う恭吾を憎めないのは、仕方がない。

だって好きなんですから。
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