バニラ
「どうした?」

あたしの顔が紅いのは恭吾の気のせいであって欲しいと思った。

だって、昼下がりの街中で…。

「何、俺が欲しくなったの?」

「バカを言うんじゃないわよ!」

「嫌いになった?」

「……ッ……」

この人は、あたしを自分のペースに巻き込ませることが得意だ。

あたしは、そんな彼の甘いペースにまんまとハマっている。

ハマるまいと頑張っても、気がつけば彼に巻き込まれている。

その時だった。
< 143 / 150 >

この作品をシェア

pagetop