秘密な彼氏
「映画よかったねー!」

のん気にそんなことを言う隆志に、一言毒づいてやりたくなった。

こっちは映画どころじゃなかったよ!

「たまには外でデートするのもいいね」

やけに意味深な言い方だ。

本当に毒づいてやろうと唇を開いた瞬間、
「あっやめー!」

歌うような口調と共に、背中が重くなった。

この声の持ち主は、
「美里」

イタズラっぽくニコニコと笑う友人の美里がいた。

「あやめ、知り合い?」

隆志が美里の顔を指差しながら聞いてきた。
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