ゼーメンシュ

八百比丘尼

八百比丘尼伝説といえば、誰しもが望む不老不死伝説では有名な話だった。
人魚の肉を食べた娘は美しい姿のまま何百年も生き、八百比丘尼と名乗った・・・と。
「あ、あんたら、まさか古川の体刻んで食べる気なの?!」
ミハルは旧友が切り刻まれて病人の口の中に運ばれる様を思い浮かべて恐怖に震えた。
「狂気の沙汰じゃないの・・・。そんなにお金があるならもっと他に方法がないわけ?!」
ミハルは飛び跳ねるようにソファーから立ち上がり、後じさりしながら事務所の壁へ寄りかかった。恐怖で体が震えているのがミハル自身一番よくわかっていた。
老人は悲しげに首を振った。
「今の医学では限界なのです・・・。それに、あなたのご親友の命や肉を食べると言った野蛮なことではないのです。ただ、おぼっちゃまを『こちら』へ連れて帰って来て欲しいのでございます。」
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