[短編]One-Way Ticket
その日は那智を意識してしまって


私はそれを気付かれないようにお酒を飲み続けた。


案の定、意識が飛び…


気がついたらなぜか那智におんぶされていた。

「えっ?」


見た目よりも大きな背中に揺られて。


状況が理解できた時には顔が熱くなった。


「あ、起きた?」


「…はい。あ、あの、降ります!」


手が震えている。
気付かれないようにパッと手を離した。


「悪いけど、つかまっててくれる。落ちるよ?」


那智の静かな声に私は余計にこの状態が恥ずかしく思えた。


「いえ、あの降ろしてください。歩けますから。」


恥ずかし過ぎて泣きそうになる。


那智は立ち止まり私を静かにベンチに降ろした。


そして数十センチ離れて那智も隣に座った。


初春の夜風はまだ冷たかったけど


私には体の熱を冷ますのにちょうどよかった。


「あの…すみませんでした。」

「何が?」

「いや、そのおんぶしてもらって…」


自分のダメっぷりに死にたくなってしまう。


私は俯いて声も小さくなる

「重かった。」


っつ…

1番気にしていたこと


「ホントにすみません!」


だんだん自分が小さくなるのがわかった。
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