恋奏~love harmony~
以前弾いた悲愴が教会内を響かせる
教会にくると
滅多にこの曲は弾かないけれど
なぜか今日だけは手が悲愴を奏でた
何分間という短い時間だが
弾き終わるとやっぱり涙が流れてる
「泣いてんのか」
頬を拭って涙を拭いていると
いつもあたししかいないはずの教会で
他の人の声が響いた
バッと声のする方に目をやれば
入り口の扉のところで背を凭れかけて立っているあの時の男の人がいた
そして、あの時と同じように真っ直ぐな視線をこちらに向けている
あの時のように体が金縛りにあったかのように
視線さえずらすことが出来ないでいあたしはどうすることもできなくて
ただ視線だけを返していた