恋奏~love harmony~







「どうして…」


やっとの思いで発した言葉は今にも消え入りそうで

届いてるのかも分からないくらいだった



ゆっくりと男の人は体を起こしてこちらに向かってくる


あたしの横に立つと
さっきよりも近いところで視線が合った


あたしは座っているため見上げる形で男の人をみる

すると、
男の人の手が動いてそっと中指であたしの目元の涙を拭いた



「ピアノの音が聞こえたから」


きっと、さっきの返答だろう

心地よい低音が耳に届く


「丘に?」


よく来るのかな?


「ここの丘は気に入っている」




じゃあ、折角丘まで来たのに邪魔しちゃったかな







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