銀杏


尊と咲の家は道路を挟んで向かい合わせ。一戸建ての尊の家に対して、咲の家は小さなアパートだ。お迎えが一緒になるといつも一緒に帰る、家族ぐるみの付き合い。

家族ぐるみと言っても咲の家に父親はいない。咲の母は未婚の母で、事情があって結婚できなかったらしい。

尊はこれが元気な咲の母を見たのが最後となった。

「バイバーイ。」

「バイバイ、サキ。」

家の前で尊と別れ、中へと入った。

「あ、いっけない。ごま油買うの忘れた。咲、カドヤさんまで行って来るから少しだけお留守番してて。」

「はーい。」


歩いて数分のところに個人商店のカドヤというパン屋さんがある。

そこにはパンやお菓子類の他に調味料も置いてあるから、咲も時々お菓子を買ったり、お使いもしたりしてお店の人もよく知っている。




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