四竜帝の大陸【青の大陸編】

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「砂糖を減らして、蜂蜜を入れろ。生地にヘゼの実の粉末を少々加えると俺様に相応しい高貴な味になるんだよ。てめぇもまだまだだな、ダルフェ」

テーブルに置かれた焼き菓子を咀嚼しながら言う竜帝さんに、ダルフェさんが苦笑した。

「ヘゼの粉末なんて貴重品は、このセイフォンじゃ手に入りませんよ。なるほどねぇ~蜂蜜かぁ……次から使います」

小さな手で器用にカップを持ち、紅茶を飲む竜帝さんは記念撮影したいほど可愛かったけれど。
私はハクちゃんの事が気になって、それどころじゃなかった。

厨房から借りてきた平鍋に柔らかな布を重ねて敷いた簡易ベット(?)で休んでいるハクちゃんの身体にタオルをそっとかけ、様子を確認した。
眼は閉じたままだけど半開きだった口は閉じられ、涎も止まっている。

「ヴェルを鍋に入れるなんて、凄い女だな~。そのまま蓋して、じじいを煮込んじまえよ」

竜帝さんは、紅茶のお替りをダルフェさんに注いでもらいながら言った。
このおちび竜はハクちゃんと違って、飲んだり食べたりしている。
しかも、声があるのよね。
竜帝さんは普通に喋れる。
ハクちゃんとは違う……。
が! 
口が悪い。
私が持っていた<竜帝>のイメージが、完全に壊れてしまった。

「じじい、じじいってなに? ハクちゃんのどこがじじいなわけ?」

そりゃ、ハクちゃんは長く生きてるみたいだけど(詳しい事は良くわかんないけれど)。
人型は20代後半の青年だったよ?
小竜の姿だってものすご~っく、ラブリーだし。
まったく……かっちーんだ!

なんでこの子(口調とこの感じからして若い、絶対! 餓鬼決定!)はハクちゃんに対してこうなの!?
頭くる~!

「じじいは、じじいだ! おい、おちび。そのタルト、食わんなら俺様が食べてやるから寄越せ。ダルフェ! 晩飯は? ちょっと早いが腹減ったぞ。帝都から道中、なんも食って無かったしな」

私のお皿からタルトを強奪した青い竜に、私は抗議した。

「あぁー私のタルト! 勝手に……ちょっと、焼き菓子全部食べちゃったの!? 私はまだ一個も食べてない! それに‘おちび‘って失礼! あんたの方がちびですっ」
「俺様はちびじゃねー! それに、あんた呼ばわりすんな! 俺様を誰だとっ……」
「ふんだっ。私はあんたの部下じゃないです」

あぁ、もっと語彙が豊富なら、こいつに罵詈雑言を浴びせてハクちゃんの仇を……!
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