四竜帝の大陸【青の大陸編】
「これ、コナリが作ったんですぅ~! 早起きして、ダルフェさんと頑張ったんですぅ」
「この変な形の焼き菓子、コナリ作でしょ! トリィ様のお皿に入れちゃ駄目。ラーズが食べなよ!」
「え~、ずるいよミチ! 僕、こんな不気味な形のイヤだよ。コナリちゃんが責任とって自分で食べればいいじゃないか」 

お茶会は、支店長さん抜きで始まっていた。
三人のお子様達は元気良く挨拶をし、自己紹介をしてくれた。
見た目はまだ小学5~6年生のこの子達が従業員として勤務してるなんて、内心はびっくりしたけれど……。
顔立ちは幼いのに3人は皆、私より背が高いのにもびっくりした。

子供のうちから親元を離れて、働いてるなんて……。
ここは日本じゃない、私のいた世界じゃないのだから私の常識で考えちゃ駄目だと思い、顔には出さないようにした。
支店の3階従業員用居住区で支店長さんと4人で暮らしているそうだ。

「コナリちゃんの作ってくれたお菓子、いただくね。ありがとう」

私がぐーすか寝てる間に作ってくれたなんて。
うう、感激!
私がクッキーを取ろうとすると、お皿ごと奪われた。
賑やかだったお子様達がおしゃべりをやめ、固まった。

「ハクちゃん……?」

私の隣に大人しく座っていたハクちゃんが動いたのだ。
緊張しながら話かける子供達を完全無視して、分厚い書類を見ていたのに。
その失礼な態度を注意しようとしたら私がお子様3人に……注意することを止められた。

「いいんです! 僕達は、その、あのっヴェルヴァイド様を怒らないで!」

リーダー格らしいミチ君が手をぶんぶん振りながら言う脇で、ラーズ君とコナリちゃんが激しく頭を上下させていた。
あわあわする3人の希望に従い、ハクちゃんには注意せず放っておいたんだけど……。
何故にいまここでお皿を強奪しますかっ~!?

「これは駄目だ」

冷たさを隠さぬ金の眼が、お皿の上の謎めいた形をしたクッキーに注がれた。
クッキーが瞬間冷凍されちゃうような冷たい声音と視線に、お子様達が凍りつく。
ま、まずい!
怖がらせてるよ~!

「な! ハクちゃん、駄目ってなんでっ」
「これはスプーンが使えん」

 はい?
 スプーン?

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