四竜帝の大陸【青の大陸編】

35

俺達は2階の事務所で茶を飲んでいた。
気絶しちまった幼竜達を3階にあるそれぞれの部屋に寝かせ、疲労困憊の俺達はぐったりと椅子に座っている。
姫さんの思い切った行動に旦那は固まっちまったし。
怒気が一瞬で消えたので、もう安心だと判断した。
このまま良いムードが続くと良いですねぇ~とか、のん気に喋くりながら撤収してきた。

「バイロイト。後でトリィ様に謝れ、死んでお詫びしろ」

爽やかな香りのする緑茶を飲み干したハニーは、澄んだ水色の瞳に殺意を浮かべて言った。

「まぁまぁ、ハニー。取りあえず支店長のおかげで姫さんも自覚したようだしさ。な?」
「はぁ、まあ私は殺されてもいいかなって思ってたんですが。連帯責任なんてことになって焦りましたよ」

のんびり言うオヤジの頭に拳を落としかけて、止めた。
俺の前にハニーの鉄拳制裁を加えたので。

「痛い……頭蓋骨にヒビが入りましたよ。相変わらず乱暴ですね」
 
ヒビ?
俺なんかいつも複雑骨折&粉砕だぜ。
やっぱり、俺は愛されてるなぁ。
愛の深さが拳の重さだ!

「おい。役立たず! ……もう夕方だ。トリィ様は昼食もとられていない。呼び鈴も鳴らない。心配だから見てきてちょうだい」

ハニーは流れるような動きで俺の首を締め上げながら‘お願い’してきた。

「ぐっつ! わ、分かった。行きます、すぐ行きます!」

この後。
気を利かせ過ぎたと全員が後悔した。

あまりに静かな貴賓室を不信に思った俺が、旦那に蹴り飛ばされる覚悟で入室し……。
 
瀕死の姫さんを、旦那から救出した。

俺が発見した時。
旦那は動かなくなった姫さんを。

「りこが言ったのだ。死んだら食べて良いと」
 
喰らおうとしていた。



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