四竜帝の大陸【青の大陸編】
「最低だな、この男」
「こんな生き物、鍋ごと処分いたしましょう」
 
私は鉄鍋を涙目で睨み付け、ぶるぶる震えながら低い声で言った。

「……そ、そこの窓から捨てちゃってください!」
「おう、了解!」
「はい、承知いたしました」

ダルフェさんとカイユさんが息ぴったりの動作で、鉄鍋を外へ投げた。
2人の共同作業で、壊れた窓から放り投げられたそれは。
夕暮れの空に吸い込まれ、消えた。

「さ、飯にしようぜ、飯! 姫さんの好きなでっかい海老あるからな! オーブンで殻ごと焼いて溶かしバターで食べると最高だもんな。急いで支度すっから、な?」

ダルフェさんはごしごしと目をこすっている私にそう言うと、部屋から走って去って行った。
残ったカイユさんが優しい手つきで、頭を撫でてくれた。

「ううぅっつ、カイユ……」

そっと抱き寄せ、背中をトントンと穏やかなリズムで軽くたたいてくれる。
小さな子をあやすように……。

「竜の雄は馬鹿揃いで。申し訳ございません……」
「カイユッ、わ……たし、私はっ」
「大丈夫……どんなに馬鹿で愚かでも。竜の雄はつがいしか愛しません。夫にするには人間の男なんかより、ずっとお勧めです。彼らは私達を絶対に裏切らない。カイユが保障致します」

カイユさんは目をこすっていた私の手をとり身をかがめ、水色の眼を私の金色に変わってしまった眼に合わせて微笑んだ。

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