四竜帝の大陸【青の大陸編】
ヒュートイルの使う“化け物”は、他の者が我に言う“化け物”とは違った。
少女のような<親殺しの少年王>はその異常なまでの利発さのためか、臣下共には影で化け物と囁かれていた。

「ねぇ。僕は君という“本物の化け物”がいてくれて嬉しいよ」
「そうか」

ヒュートイルは老いて死に、遺言通りに離宮の庭に埋葬された。
そこに用意されたのは墓石ではなく、植物。 
デルの小さな苗木だった。

ヒュートイルの孫が即位した。
血は繋がっていないが、孫は孫。
 
ヒュートイルの一人息子は、王妃が三人目を孕んですぐ死んだ。
王妃は三人目の子が産まれると、その男子を皇太子とした。
ヒュートイルの『孫』である兄弟は、相次いで死んだ。
 
王妃と6代目の王が存命中はセイフォンに入国することは無かった。
彼らは国内の術士に異界に関する術式を禁じた。
破った者は処刑された。
我が<処分>する必要が無いように。
我がセイフォンに……王宮に近寄らないように。
 
この時代には我が人間の頭の中の思考・記憶を読み取れることが広く認識されていた。
王妃が誰の子を産もうが、誰を殺そうが興味が無いのだが。

デルの木は、花が咲くほど育っただろうか?


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