四竜帝の大陸【青の大陸編】
我は<赤い髪>と共に、青の竜帝のいる帝都に移動した。

「ヴェル! おかえり、ヴェ……うわ!?」

走り寄ってきた<青>が、我を見て顔をしかめた。

「じじい。すごい【呪】を背負ってるぜ! 巫女王に呪われたな!?」

【呪】か。
そういえば我が飛び立つ前に何か叫んでいたな。
興味が無いので無視したが。
【呪】をかけていたのか。

「すげえ【呪】だな。まあ、人間がじじいをどうこうできやしないが。重たそうだし、うざったくねぇか? 巫女を殺してすっきりしちまえよ」

ラパンの花を見ていた我に<青>が言った。
うざ、うざ……うざったい?

今の時代はかわった言い回しをするのだな。
こういう状況に使う言葉なのか。
ふむ、<青>は意外に物知りなのだ。
少し前までは我の膝ほどの背丈だったのに……いつの間にか成竜になっていた。

「ランズゲルグ」

手を伸ばし、その頬に触れた。
当代四竜帝の中で、最も美しいと賞賛される顔だが。
我には、皆が讃えるその美しさが理解できない。

「な、なんだよ?」

四竜帝の中で、一番若いこれも。
じきに老いて、土に還る。
美しかろうと醜かろうと。
同じことだ。

「案ずるな」
「……ヴェル」

人間も。
竜も。
花も。
我から見れば、大差ないのだ。

「ラパンか……セリアールは、先代の<青>はこの実を好んだ」

我はラパンの花の香りを嗅いだ。
不快ではない。
良いとか悪いとかは、はっきりとは分からない。
不快ではない、それだけだ。

「あの魔女もこの花と同じ。すぐに散り、土になる。放っておけ」

<青>は青い髪をがりがりと掻き毟り、ため息をついた。

「ったく。冷酷なんだか優しいんだか……」

冷酷?
優しい?
我が?

「どうでもいいだけだ」
 
ラパンの実を好んだ先代と変わらぬ青い瞳が、瞠目した。

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