四竜帝の大陸【青の大陸編】
思わず手で自分の口を押さえた私を見て、ハクちゃんは首を右に傾けた。
膝からふわりと飛び、私と目線をしっかりと合わせて話しかけてくれる。

「駕籠は揺れぬ……ダルフェも濡れないようにする。りこは何も心配することは無いのだぞ? 我が居て、りこの乗る駕籠が揺れるなど有り得ぬ」

ハクちゃんの小さな手が私の顔に伸ばされる。
触れる寸前で、それは硬く握られた。

「この手では、触れられぬな。……風雨を避ける術式は外で操らねばならぬ。その為、りこと同衾できない、すまぬ。……カイユ、今宵は我が妻の側に。片時も眼を離すな。まだ、身体が安定していないはずっ、りこ?」

私はハクちゃんの両腕を掴んで、小さな身体を抱きしめた。
思いっきり。
精一杯、強く。

「ハクちゃん。駕籠とダルフェさんを守ってくれるのは、嬉しい。でも、そのせいでハクちゃんが1人で雨に打たれるの? 一晩中? そんなの、駄目だよ……嫌」

私に抱きしめられたハクちゃんの身体が一瞬硬くなってから、ふにゃりとなった。

「駕籠とダルフェはどうでもよいのだ、我はりこを護る。他はついでだ。あぁ、我は嬉しい……我のこの手がりこを傷つけるのでなく、護ることが出来るということが。とても、誇らしい」
「ハ……ク」

ハクちゃんの言葉に。
貴方のまっすぐな愛情に。

胸が。
息が。
心、全てが。

「ハクちゃん……ありがとう」

引き寄せられ、飲み込まれる。
  
「ありがとう」

想いを込めて白い鱗に覆われた口元にキスをした私に、尻尾をくるくる回しながらハクちゃんは言った。

「人型の我にもしてくれ。……沢山だぞ? 我が満足するまで、いっぱいな」

うん。
いっぱいする。
貴方がもういいって言っても、やめてあげないんだから。
 

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