四竜帝の大陸【青の大陸編】

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いろいろあった帝都への4泊5日の旅は、あと少しで終わりだった。

「りこ。帝都上空に入った。すぐに<青>の城が見えてくるぞ」

ハクちゃんが念話で教えてくれたので、私はペンを机に置いて窓を覗いた。

「……見えないよ、ハクちゃん」

こんな条件じゃ、マサイ族だって無理だと思う。
まるで台風のような天気なうえに夜だし。
うーん。
街の明かりが微かに見えるかなって程度。
横殴りの雨と稲妻の閃光。
轟く雷鳴。
でも、駕籠は揺れ1つ無い。
ハクちゃんのおかげだ。
支店を出た晩は強い風が吹き、雨が降った。
朝になったら晴れたけれど。
風が強くて、その日もハクちゃんは外で術式を使って駕籠を揺れから守ってくれた。

日に日に……風はおさまるどころか強くなる一方で。
ハクちゃんに会えるのは朝の挨拶の時だけになってしまい、15分位しか顔が見れなかった。
それ以上だとダルフェさんの上に‘置いて‘きた術式が不安定になるからって……。
不安定。
私自身もそうだった。
支店で目覚めてからハクちゃんへの依存度が増していた私にとって、この状況は辛くて。

でも。
ハクちゃんが私の為に頑張ってくれてるから。
我が儘は言えないって思っていた。
だけど。
3回目の朝。
先日からの悪天候は、台風のようになった。
術式を強化するからと、おはようって言ってすぐに転移しようとしたハクちゃんに縋って、私は泣いてしまった。

行かないで。
離れないで。
もう、いや。
貴方と離れるの、嫌なの。
もう、だめ。
ハクちゃん、私の側にいて!
 
小さなハクちゃんを抱きしめて、年甲斐も無くわんわん泣く私に。

「りこ。りこ、あ~ん」

条件反射で開けた私の口に、ハクちゃんはほんのり甘い砂糖菓子のようなものを入れた。
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