四竜帝の大陸【青の大陸編】
私の舌の上で溶けたそれは、出会ったときにくれた竜珠の味に良く似ていた。
うっとりするような上質な甘みが、口から咽喉へ。
咽喉から全身に広がって……。

ハクちゃんが足りなくてカラカラだった心に、じんわりと染み入った。
涙も止まり、落ち着いた私にハクちゃんは言った。

「我も、もっとりこに触れていたいが……」

私の顔を……涙を優しく舐めとって。
ちょんって。
とがった口先でキスしてくれた。

「りこを悲しませるのは、泣かれるのはとても辛い。しかし……我が恋しいと泣かれると」

唇に、頬に。
目蓋に、耳に。

「喜びを感じてしまう。震えがくるほどに、歓喜と痺れる様な愉悦に満たされて……全てを放り出し、りこに溺れてしまいたいと思う。だがな、りこ。我は少々賢くなったのだ」

くすぐったいキスに、思わず微笑んでしまう。

「賢く?」
「賢くなった我は気づいたのだ。最初はりこが得られるならば他はどうでも良く、世界の秩序・管理もやめるつもりだった。が、りこを幸せにするには……りこが幸せだと思えるようにするには‘世界’が必要であり、りこに適した‘環境’を用意することが重要なのだ」
「世界と環境?」
「そうだ。その環境を形作るのに、部品がいるのだ。りこが好む‘部品‘がな」
「部品?」

私には、彼の言っている意味が良く分からなかった。
でも、私の事を大事に思ってくれていろいろと考えてくれてるってことは、理解できる。

「部品は無数で多種多様。我はそれらを吟味し篩にかけ、さらに選別する。まあ、詳しく語るのは後日にして……。外は雷雨だ。ダルフェが雨に濡れると、りこの心が痛む。今、我がりこの言葉に従えば……後でりこが苦しむのだろう? 自分を責めるはずだ」
「ハクちゃん……」
「我は少し賢くなっただろう? りこのおかげだぞ? これからもっと賢くなって、りこを幸せにするのだ」

金の眼を細めたハクちゃんは。
しっかりと握った小さな手で、私の頬をくりくり押した。
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