四竜帝の大陸【青の大陸編】
「りこと出会ってから、我はとても忙しい。脳は常にりこの事を考え、眼はりこに釘付けで。心はりこだけを想い……この身体はりこが欲しいと、喚き立てる」

真珠色の口から現れた真っ赤な舌がぺろりと、私の唇を舐めあげた。

「りこ。我のりこ。帝都に着いたら、健気な我に褒美をくれ」
「ぶぶっつ! 健気って自分で言う?」

思わず吹き出した私に、ハクちゃんは眼をくるんと回し。

「ふむ。泣き顔もかなり惹かれるが。やはり笑っているほうが良いな。では、行って来る」
「うん。……ごめんね、ハクちゃん」

ハクちゃんは首を傾げて言った。

「違うぞ、それは。『いってらっしゃい、頑張ってね! あ・な・たっ』って言うのだろう?先日読んだ<実録・新婚生活24時! これであなたも円満家庭 第1巻>に書いてあったぞ」 
「な、なにそのタイトル~! うぷぷっつ」
「もしや違うのか? ダルフェが読めと……おのれ、ダルフェめっ! 蹴り殺してやるっ。
「きゃー! ま、待って! うん、そうだよね、ごめんねじゃないよね!」

そうだよ、うん。
本はともかく。
ごめんねは、違う。

「えっと……今日もありがとう、ハクちゃん。ダルフェさんから落っこちないように、気をつけてね。いってらっしゃい、頑張ってね。あ、あ、あなた」

あなた……なんか、照れる。

「うむ。我は頑張るぞ! りこに褒めてもらい、褒美を手に入れるのだ!」

尻尾をぶんぶん振って、術式で‘出勤’した頼りがいのある小さな旦那様を見送った。
一人になった私は、思案した。
褒美。
ご褒美?
う~ん。
私、基本的には私物がほとんど無いし。
お金も、もちろん持って無い。
でも。
ご褒美を……あっ!

「良い考えよね!? それ!」

私はベットから降りて、居間で朝食を準備してくれているカイユさんに向かっって駆け出した。
ハクちゃんに贈り物を。
今の私に出来るもので。

「おはようございます、カイユ! 裁縫道具、貸してください!」



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