四竜帝の大陸【青の大陸編】
翌日も暴風雨で。
旦那は朝の挨拶の時だけ寝室に帰り、常に念話で姫さんと繋がりながら俺の額で術式を展開し続けた。
 
天候は酷くなるばかりで。
まるで。
世界が叫び狂っているかのようだった。

 
陛下の城にある発着所には、衝撃吸収用の装備が完璧に整えられているのが上空から確認できた。
明かりは無い。
竜族は人間よりも眼が良いし、竜体の時は夜目がかなりきくので問題は無かった。
人影は……ん?
小さな竜が走り回っているなぁ~、ありゃぁ陛下だ。
駕籠の固定器具を準備しているらしいなぁ……人で。
ま、仕方ねぇよな。
旦那が雄の存在を嫌がるから担当の奴等は、使えないし。
女子供を夜に……こんな悪天候の野外に出すわけにゃ、いかんしねぇ。
  
「さあ、着陸体勢に入れ<赤い髪>よ。我は風雨と気流の調整をする。振動1つ許さぬ。もし、揺れあらば……カイユの腹を引き裂くぞ?」

無駄に‘賢く’なった<白金の悪魔>は、脅し文句も進化した。
俺自身を傷つけられるより、ハニーに何かされることのほうが……愛する者を傷つけられる事のほうが恐ろしい、と。
この悪魔のように美しく、天使のように無知な男は知ったのだ。

「降りたら……我は、りこに‘ご褒美’をおねだりするのだ。……カイユはお前が抑えておけ。次に邪魔されたら流石に我も、カイユを殺しそうだ。りこに嫌われたくないので、カイユは手にかけたくない」

腹を引き裂くという極悪非道最低最悪発言で、すでに嫌われるんじゃないのかと思ったが。
俺の額の上で短い足を使ってステップを踏むご機嫌な様子に、口を噤んだ。


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