四竜帝の大陸【青の大陸編】
竜帝さんの来る少し前、ハクちゃんは私の脱いだネグリジェを手に取り。

「りこのも、我が畳んでやろう! ふむ、りこが着ていた衣類……りこの、脱ぎたて……りこの……」
「え? あ、うん。ありがとう」

頷きつつ、なにやら1人でぶつぶつ言いながら。
ハクちゃんが丁寧に畳み始めた時。
ソーセージ小僧がやって来た。
床でソーセージにまみれつつ転がって笑う、この腹立つチビ竜がっ!

「竜帝さん、笑うのやめて下さい……なんかムカッってしちゃうし。それに床、汚れちゃったところは自分でお掃除して下さいね」

私はハクちゃんの畳んでくれた服とハクちゃんのパジャマを持ち、ベットから降りた。
足元には先の尖ったショートブーツが置いてあった。
内側がもこもこしていて、暖かそうだった。
カイユさんが用意してくれたそれは、セイフォンより帝都が寒い土地なのだと再認識させてくれた。
今まではこじゃれたつっかけのようなサンダルを履いてることが多かったけれど……。
帝都に着たんだ、私は。
そして、このソーセージまみれの小汚い竜帝さんが雇用主となる……ちょっと、不安。
いえ、かなり不安です。

「この服も、とても似合っている。りこは何を着ても綺麗で、愛らしいな」

金の眼を細め、翼をぱたぱたさせてハクちゃんが私の右袖を掴みつつ言う

赤面するようなことをさらっと言えちゃうって、すごい。
それって、とても嬉しい。

ハクちゃんはお世辞が言えるほど器用な人じゃないから。
他の人から見たら綺麗でも愛らしくも無い私だけど。
ハクちゃんがそう思ってくれて、言ってくれて。
すごく、嬉しいな。

「ありがとう、ハクちゃん。ハクちゃんもかわゆいよ。何も着てなくたって、1番可愛い!」

袖を掴んでいる彼の小さな手に、私は言葉で表せない思いを込めて手を重ねる。
ハクちゃんは尻尾を、ふりふりしながら言った。

「りこもだぞ! 何も身に着けていない時だって、我のりこは世界一綺麗で愛らしかった」

「がぁぶぶごぉっぶぶうー!」

再び、盛大にソーセージを吹き出した青い竜を、今回は私も注意できなかった。
 
オヤジっぽいぞ、ハクちゃん。


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