四竜帝の大陸【青の大陸編】
「だ、だってよ、じじいが妙な帽子を被った姿で服を畳んでるんだぜ? ぐっふふ、 高慢ちきで底なしの自己中俺様の! あ、あのヴェルヴァイドがっ!! 正座して嫁の脱いだ夜着を、たたんでるーっぎゃあはははぁ」

床に転がって、笑い続ける竜帝さんの言葉は早口で全部は聞きとれなかった。
ハクちゃんはそんな竜帝さんを1度も見なかったけれど。

「……」

でも、私はぴんときた。
竜帝さんは、またハクちゃんの悪口を言ったに違いない。
ハクちゃんのことに関しては、基本的にいろいろ鈍い私も感が良くなる気がする。 

実は。
ハクちゃんは、自分ではパジャマの脱ぎ着が出来なかった。
紐をといて、腕を抜く。
袖口に腕を入れ、前の紐を結ぶ。
ベストタイプだから、脱ぎ着は簡単なのに。
なんでもないような事なのに、どうしてもうまくいかなかった。

そして、驚くべき事実が!
人型の時も、自分では衣服が着れないらしいのだ。
術式を使って済ましていたので、普通の着方を全く理解していなかった。
手を使って着ようと思った事すらないと……。

紐をリボン結びに出来ないどころレベルじゃない。
さすがに言葉に詰まった私に。

「我は、これは出来るのだぞ? かなり上手なのだ」

私が脱がしてあげたパジャマを丁寧に畳んで。

「うむ、完璧だ。我はなかなか‘できる男’なのでな」

得意げに言った。
うう。
あまりに可哀相で指摘できなかった。

それ、裏表が逆ですよって。
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