四竜帝の大陸【青の大陸編】

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「いいか、 よ~く聞けおちび! おちびには竜族の義務教育を受けてもらう。毎月末に試験をし、ちゃんと知識をつけてから本採用だ。阿呆を雇うほど俺様は寛大じゃねぇ。教育期間中も手当ては支払う。正雇用時の7割り出す。ダルドからも毎月定額が送金されるから、けっこうな額になるはずだ。財産管理は当分は俺様がしてやるから安心しろ。じじいには無理だからな。働かなくとも豪遊できる立場のおちびが、自分から働きたいって言い出したんだ……覚悟しろよ! 働かないで大人しく、お姫様をしててくれるのが1番助かるんだが。まあ、だんだん理解すんだろうしな。まだ‘普通‘にこだわるのも仕方ねえし……優しい俺様はおちびの意志を尊重してやる。この俺様に感謝するがいい! そしてじじいっ! てめぇは今までの爛れたヒモ生活を反省し、女関係を整理整頓清算するんだな! この小市民で貧乏性な嫁を見習い更生しろってんだっ」

ここは竜帝さんの執務室。

「……」

医務室から、ハクちゃんが術式で連れてきてくれた。
重厚な応接セットと執務机だけの飾り気の無い部屋だったけど、大きな窓から広い庭が見えて素敵だった。
壁は天井まで届く本棚で占められ、机の上と違ってきっちりと本が整頓されている。
本と書類が乱雑に積み重なった机の上で、やたら偉そうにふんぞり返った青い竜の言葉はすごく早口で、まったく意味不明。
いつもそうだけど、竜帝さんの言葉はとても聞き取りずらい。
一気にどばどばーっと言われても、分かりません!

「で、分かったのか。おちび!」
「……え、あの……」

無理。
今のとこしか聞き取れなかったです。

「分かりませんでした。だって、その……ごめんなさい」

早口なうえに、1度にいっぱい喋られたらお手上げでございます。
あ、言い訳は良くない。
私が悪い。
セシーさんが熱心に教えてくれたし、ハクちゃんだってつきっきりで通訳してくれて。
分からないのは、自分の努力が足りてないって証明だ。
周りに甘え過ぎて……。

「よし。わざと分からんように言ったんだから、それでいい」

へ?
ちょ、ちょっと!?

「カイユ。お前が必要だと思うとこを要約して、おちびに教えてやってくれ。……突っ立ってないでそこに座れ、おちび。本調子じゃねえんだしよ」

今度はゆっくり言ってくれたので、理解できた。

「はい、ありがとう竜帝さん」

竜帝さんの指差した応接セットのソファーに、私は腰を降ろした。
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