四竜帝の大陸【青の大陸編】
「のど飴、舐めてみたいの?」

私の言葉に、ハクちゃんは首を振った。

「違う。入れ物だ、これが欲しいのだ」

入れ物。
この小さなガラスポット?

「カイユ、くれ。我にこれをくれ!」

ハクちゃんは両手でポットを掴むと、上下にぶんぶん振った。

「ちょ、ハクちゃん。 駄目だよ、そんな風にしたら蓋が取れて、中身が出ちゃうっ」

おもちゃを欲しがる駄々っ子のように、ハクちゃんは乱暴にポットを振り続けた。

「欲しい、我はこれが欲しい! これに入れたい、我もこれに入れてみたい!」
 
これに……何か入れてみたいのかな?

「わ、わかりましたヴェルヴァイド様。同じ様な物が幾つかありますから、お持ちしますわ」

ハクちゃんの奇行にカイユさんは、ちょっとびっくりした表情を浮かべたけれど。
すぐに席を立ち、部屋を出て行った。
まだポットを離さないハクちゃんを、私はなだめるように背中をゆっくりと撫でて言った。

「ハクちゃん、これは置こうね? 新しいのをカイユがくれるから、ね?」

ハクちゃんは私を見上げ、金の眼をくるりと回した。

「うむ、わかった。これは置いておく。……りこ、抱っこ」

握った両手を私に向かって差し出したので、腕をとって抱っこしてあげると、ハクちゃんは小さな頭をすりすりと私の身体にこすりつけた。

「りこ。我は良い考えを思いついたのだ」

彼の黄金の眼が、きらきらと輝く。

「おい。俺様はシカトかよ」

あ、そうでした。
竜帝さんはハクちゃんにお話が……。

「ハクちゃん、竜帝さんが呼んでるよ? お話があるんだって」
「我は今、忙しい。<青>と話す事など無いしな」

忙しい?
えっと、抱っこされてるだけだよ?

「はぁ、ったくよぉ~。おちび、じじいに俺様と話をするように、言ってくれ……そこの庭で待ってるからよ」

疲れたように言い。
青い竜は、窓を開けてふらふらと外へ飛んで行った。
ここは1階なのですぐ地面に降りて、そのまま芝生にゴロリと寝転がった。
芝生は青々としている。
日本の年末のような寒さなのに。
不思議……そういう品種なんだろうけど。
開けた窓から入ってくるひんやりした風に、思わず震えてしまう。

「りこ、寒いのか? 我のりこを寒がらせおって……<青>め。窓を開けたままとは……仕置き決定だな」

ハクちゃんは私の左右の頬にちょんちょんってキスをして、開いたままの窓からふわりと飛んで行った。

「すぐ戻る」

ハクちゃんは小さな手で外側から、きちんと窓を閉めてくれた。
冷気はこれで入ってこないけど。

「し……仕置きって何!?」

私としては、その事の方が気にかかるんですがっ!




< 224 / 807 >

この作品をシェア

pagetop